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ツイッターに書ききれないことの保存場

「BTSのファンは15歳の女の子」で炎上したコーデンとBTSについてcritical thinkingする

BTSがパフォーマンスを行ったUN総会に対して、米の人気番組司会者James Codenがコメントした言葉が炎上、数か月後BTS本人たちがCodenの番組に出演し、リーターRMのたくみな返しで一件落着、という筋書きに対して、ちょうど書いてる途中の論文と重なる部分があったので記録に残しとく。

 

 

これまでの流れをおさらい

UN総会にてBTSがスピーチアンドパフォーマンス

ArmyたちがUN総会のストリーミングを視聴

コーデンが番組でそのことを取り上げ、こうコメント
The United Nations General Assembly kicked off this morning in New York City, and it started with some pretty unusual visitors – BTS were there,” Corden said. “Historic moment. It actually marks the first time that 15-year-old girls everywhere found themselves wishing that they were Secretary General António Guterres.
(国連総会が今朝ひらかれたんですが、きわめて稀な参加者とともに総会が始まったんです、BTSがいたからね。歴史的な瞬間です。実際、「ああ私がアントニオ議長だったらのに」と願う15歳の女の子たちがいたるところにみうけられたんですからね。)出典:James Corden faces backlash after calling BTS’ fanbase “15-year-old girls”


BTSのファンをバカにした発言と炎上

数か月後、BTSが番組に出演、リーダーRMから話を蒸し返し、コーデン謝罪
We said – and this was where I think it was wrong – we said that your fans were 15-year-old girls, which, of course, isn't true, because I'm 43-years-old, and I consider myself to be one of the biggest BTS fans on planet Eart.
(番組で僕はこういったんです、これは間違いなんだけど、僕は君たちのファンは15歳の女の子たちだって、それはもちろん、違いますよね、なぜなら私は43歳でそして私は絶対的に超絶BTSのファンなんですから)出典:BTS ARMY get apology from James Corden following 'extreme' backlash

ちなみに、その後タイミングは偶然か必然かTimesがいかにArmy がDiverseなファンダムかを紹介する記事を発表。(https://time-com.ezproxy.uio.no/6122609/bts-army-photos/

BTSのファンは15歳の女の子」騒動に終止符を打つような形になった。

 

この話はこれでおわりだが、BTSを越えて(私の専門分野の視点から)いったいどういうDiscoureがこの根底にあってどんなパワーがこの一連の騒動を支配しているかを書き残しておく。(日本語でdiscourseに関連する教育を受けていないので私の日本語役が違うかもしれんこういうことがいいたい, I'd like to say be like.... I would consider what kind of discourse is embedded under the public image of foolish girls' fandom, and what is reproduced within the discourse. )


コーデンの謝罪は謝罪ではない

コーデンの「僕は43歳のBTSファン」だから「僕が言ったことは間違っていた」は謝罪ではない。
ここで問題なのは、BTSのファンを15歳のおんなのこたちと言ったことではなく「UN総会をBTS目当てでみてああ自分も議長になりたいと思う愚かな人」を「15歳の女の子」とくくったことである。

ここには2つのDiscriminationがある
1)15歳の女の子はUN総会の内容を理解できないバカである
2)アイドル音楽はバカが支持する音楽である

ここでそれぞれ詳しくみてみよう。

1)女の子=バカという単純なミソジニーが横たわっている。

まず最初に勉強の出来不出来にジェンダーは関係ない。
社会構造によって教育の機会を奪われやすい女性のほうが、ある特定の基準でバカと社会的に見なされることはよくありますが。(Structural feminist theoriesの本とか読むといいよ)
したがって、バカの象徴として女の子を持ち出したことに対する謝罪はコーデンはしていない。

2)アイドル音楽は劣った音楽であるという偏見。

これはどうしてこんな偏見が起こるかというと2つの階層があって、ひとつはアカデミック的にみてアイドル音楽(ポピュラー音楽)はクラシック音楽など芸術音楽に対して劣っている、なぜなら大衆vs芸術という構造があるから。

もうひとつは西洋のロマン主義引きずってる考え方で、authenticity神話とか私の分野ではよく言ってるんだけど(Frithとか読んでくれ)ロックとかフォークとか作者が自分の気持ちを表現する音楽は本物で、商業音楽みたいに誰か別の人が作った音楽をパフォーマンスするだけなのは偽物だ、みたいなやつ。
(これに対する反論で「BTSは作曲に参加している」は、言い返したことになりません、それだとただの西洋のロマン主義の再生産にしかならない。「本物の音楽」自体が奇妙な考え方で、音楽authenticityをやるならPost modernism的にすごく流動的に考える必要がある、が正しい反論です)あー日本語で説明しずらいな。

 

ということでコーデンの「僕はBTSのファンなので15歳の女の子のファンベースは間違ってたごめん」は謝罪ではないのです。


謝罪するなら「二重の偏見によって、女の子が知能で劣っていることと
アイドルの音楽をバカにした発言をしました。女の子が劣っているということはないし、アイドルという音楽ジャンルづけじたいがバカげたものでしたごめんなさい」
が今回の場合の謝罪例になります。

Times誌がコーデンの援護射撃をしてしまい、話の核がずれた

で、個人的に問題だと思っているのはTimes誌がARMYのdiversityさを紹介した記事をこのタイミングでだしたことで、「女の子はバカ」という偏見の問題がかすんで、ものの本質が見えにくくなってしまったと思うんですね。
Times誌の記事は、人種も年齢も職業も違う様々なBTSファンを紹介してて、
https://time-com.ezproxy.uio.no/6122609/bts-army-photos/
この記事のポイントはBTSめっちゃdiversityに富んでるってことなので、そこに異論はないのですが、それがあたかも「15歳の女の子がBTSのファンベース」にたいする反論として扱われてしまう危険性を私は感じています。
「15歳の女の子がBTSのファン」に対する反論は「いろんな人がBTSのファン」ではないのです。それだとマイクロアグレッションバージョンの「15歳の女の子」を否定していることになるので。
15歳の女の子で悪いことは何もないのだということをまず言わなければいけない。

そのへんの周知が進んでいないことを危惧します。

いいか、15歳の女の子たち、あんたらの好きなことにケチつけるやつは、かつて15歳の女の子だったうちらおばさんが片付けとくから、あんたらは安心してこころのおもむくままにすきなことをしな!!!
あんたらが大きくなったときにうちらおばさんが持ち出してきた知識をちょっと思い出して、こんどは他の15歳の女の子を攻撃するバカに反論してくれ!

 

 

cultural studiesを北欧で勉強しています。アカデミックなお問い合わせはツイッターにおねがいします。