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SKAMってなんだったんだろう(韓国版リメイクはじまる前に当時何があったかをふりかえる)

2015‐2017にノルウェーで放映し、世界的な文化現象になったSKAMってなんだったんだろうということを、韓国版リメイクが始まる前にふりかえっとくための記事です。

筆者はSKAMのせいで、ノルウェーで2年半暮らしてしまったという頭のおかしい人です。

skam season3 isak header

 

 

SKAMとは

SKAMは2015‐2017年にノルウェーで放映した、ティーンエイジャー向けのTVドラマ。

公式サイトはブロックかかっているためノルウェー国外からは見れませんが、かつてのFandomがまとめたサイトからは英語字幕で見ることができます。

sites.google.com

日本語でなんか雰囲気つかみたいときは、ドはまりした当時の私のTumblerをご覧ください。いま見返しても私の頭がおかしいことはわかる。

さらに異常なことに当時Zine作って売っていた。狂っている。(ノルウェーに住んじゃった時点で終わってますよ)

 

世界的に人気になったことについて

SKAMは世界中で人気になりました。当時(途中から)あの輪の中にいて、今振り返ってみると、シーズン1でノルウェー国内くまなく広まり、シーズン2でスカンジナビア全体と一部ヨーロッパに広まり、シーズン3でアジアと北米と南米にも広まり、シーズン4は全世界が見守った、という感じでしょうか。(あやふやな記憶)

この項目では、どう世界的に有名になったんだってことをまとめます。フォーマット・ストーリー・政治性についての3本だてです。

フォーマット

監督脚本のJulie AndemはSkamのまえにJenta(ノルウェー語で少女とかガールとかそういう感じの意味)というローティーン向けのTVドラマを作っていて、その時すでにソーシャルメディアを駆使して、現実と同じ時間軸でドラマを展開させる(現実と同じ時刻にドラマのクリップ(数分程度のもの)を出す)、って手法をやっていたんですね。

で、それが評判が良かったので、金だしているNRK(ノルウェーの国営放送局、ノルウェーNHK)が「今度はハイティーン向けの作ってよ」とJulieに言って、で作られたのがSKAMなのです。

メディアとかは結構このフォーマット(現実と同じ時間軸で映像公開)がユニークだと言っていて、まあこれは本当にその通りだと思います。(私がかつていた大学院のメディア研究している系の人たちはけっこうSKAMに関するジャーナル出して気がします。

もし英語に抵抗がなければこのあたりどうぞ。(雑)

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/1749602019879856

Combining New and Old Viewing Practices: Uses and Experiences of the Transmedia Series “Skam”

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/1527476417741379

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/13183222.2018.1529471?casa_token=zuFSUcmIEbUAAAAA%3ALqmHQMNkkfkUDtBwYfC_xNCKJDaqXUZYNwWXSsIDL9ELKArrfS0Cm-pOjxKhkD0n-Ez8O1xZElrUfw

ストーリー

シーズンごとにひとりの主人公を据えて、その主人公の目線で話が進んでいきます。制作側がソープオペラだと思って作っているのでクリシェがたくさんあり、予測可能なストーリーラインでもあります。ただ、人類はお約束が大好きなので、その辺も世界的に人気を博した一因かもしれません。そして、現実と同じ時間軸で進んでいくので、そのフォーマットがソープオペラ感を薄めていたような気がします。

ただ、これは当時まじで先の展開を知らなったから言えることで、すでにたくさんのリメイクが作られて、何回も「リアルタイム」を経験してしまうと、そのリアルタイムさえも先が読めてしまうので、これはオリジナルだけが作り得たボーナスだったんでしょうね。(なんかうまく言えないけど、10週~12週くらいの中で起承転結つけなきゃいけないわけで、そうするとまあ7週目以降にでっかい不穏なストーリー入れ始めますよね、みたいな予想ができちゃうんですよ。)

それから、爆発的な人気につながったのは、やはりシーズン3のIsakの物語、高校生の男の子が自分がゲイであることを受け入れるストーリーだったと思います。(ただこう書くと「なんだ、どこにでもあるじゃんそんな話」という感じですが、当時はハッピーエンドになるゲイの話はまだ少なかった。)そして、何より主人公がかわいかったので(重要)たくさんの人の目を惹いたというのも一因ではあると思います。

 

政治性

Julie(監督)が「ストレスに囲まれてるティーンにエールを送りたかった、悩んでいるのはあなたひとりではないって」みたいなことをインタビューで事あるごとに言っていたのですが、そのストレスを引き起こしている政治性をドラマの中で大事にしていたところが、結局SKAMが評価された理由だろうなと今考えると思います。(ただ、当時の私の思考回路はIsak!Isak!Isak!Even!Isak!Isak!だったので、政治性もくそもなかったですが)

これはノルウェーの文脈なので、日本に暮らす人にとっては100%分かるかと言われれば微妙ですが、孤独という概念と鬱という病、性的同意とレイプ、フェミニズムと家父長制度、セクシャルアイデンティティ、宗教アイデンティティ(特にキリスト社会に生きるムスリム)を、ティーンが実際に目の当たりにする文脈にきれいに組み込んでいたので、視聴者が理解して解釈して、そして語りやすかった。視聴者に語らせるというのは、現代(インターネットが当たり前にある世界)ではとても重要なことで、語る人が多ければ多いほどそれが目に見える現象になるわけです。

そしてこの政治性は、リメイクされて各国に輸出されるときに現地の文脈で再解釈されていくという仕組みです。

各国でリメイクされたSKAMについて

私の知る限り、フランス、スペイン、イタリア、ドイツ、ベルギー、オランダ、アメリカでリメイクされています。フランスが一番長く続いていて今もシーズン11?とかまでやってるんじゃないかな?アメリカはシーズン2で打ち切りになってましたね。

どこの国もシーズン3前後までは、比較的ノルウェー版のストーリを忠実になぞりつつ、少し各国っぽいアレンジして作って、その後フランスとドイツはオリジナル脚本作りながら長く続けているようです。(あんまフランスとドイツの社会情勢知らなくて、途中で追うのやめちゃったから詳細は、わかんないっす)

こうしてリメイク作れる国をざっと眺めると、金を持っているかつての宗主国の面々って感じですが、そこに韓国が殴り込みに行くって構図が私は興味があります。

早く放映スケジュール出ろ~ (とんでもない記事の終わり方)